僕は年間数回くらい、舞台を撮影する。AKB,ジャニーズや宝塚、歌舞伎や能などジャンルはバラバラだ。通常はゲネプロといって本番と変わらない最終リハーサルに呼ばれることが多く、内容も分からないまま撮りまくっている。ゲネプロは自由なところがあり、他のカメラマンに迷惑さえかけなければ、途中で移動などもでき、撮影条件による失敗も少ない
撮影は難しくないが、写真説明が難しい。横で撮っているフリーのカメラマンなどは、進行ごとに撮ってクライアントに渡せば良いだけで、いつもうらやましく思う。僕らは「●の場面で太鼓をたたく●さん」くらいの写真説明を付けなくてはならず、いきなり知らない舞台に行って、名前と顔が分からない状況が続く
ジャニーズやAKBなどは、最初ユニットで登場するので、全体を撮るのは楽勝だけれど、そのあとバラバラになって舞台が始まるので、誰が誰だか全くわからなくなる。そういう時は、最初のユニットの写真を拡大して、「●●は右目の下にほくろ」「●●は銀のネックレス」「●は青いくつ」などとプロファイリングしてから、写真説明の打ち込みが始まる。ほんとサッカーやのようにゼッケン番号が付いてりゃ楽なんだけどなぁ
(余談になるけど、サッカーも開始前の記念撮影が重要。ゼッケンの見えない写真の場合は「茶髪の金ネックレス」などの特徴で選手を特定することもあります)
ゲネプロはそんな感じで進んで行くんだけど、やっかいなのは本番の公演での撮影。あくまでお客さんのための舞台なので最大限の気を使う
歌舞伎や人形浄瑠璃で目立たないように舞台を支える黒衣(くろご)という人がいて、小道具を渡したりしているでしょ。後方や舞台わきから僕らも撮るので目立ってはいけない。黒衣と同じなのです。頭からスニーカーの先まで真っ黒に統一し、音を立てずに粛々と撮影します
そこで真っ白の服や、蛍光色の上着なんて着て来たらアウト。「あのカメラマンは舞台撮影を知らない」ということになる。先日の能の舞台も10名くらいのカメラマンが来ていたけど、みごとに衣装は真っ黒。僕は気が付かなかったけど、マスクまで黒いカメラマンが多かった
僕らは「出社したら、たまたま舞台撮影が回ってきた」みたいな感覚で撮影するけど、舞台専門のカメラマンって、服装の間違いだけでも次の依頼に影響すると思うのでシビアだなと思う
でも黒い服装していると弱点もあって、ジャニーズの舞台なんかは、急に大きな舞台装置が動いてくるので、気づかれずに巻き込まれそうになることもある。本当プロの世界って命がけなんです
舞台だけでなく、商品撮影などの物撮りでも黒い服装が望ましい。白金のアクセサリーやグラスなどを撮る場合に、白い服だと映り込みで撮影者が目立ってしまう。物撮りのアシスタントやスタジオマンが黒い服装をしているのはそのためです
カメラマンって服装が自由と思われているけど、舞台なら黒い服、国会なら背広と日ごとに変わるので、実は自由じゃありません
#後日、懇意にさせていただいている歌手のタレント事務所からライブの招待があり顔を出した
#撮影はしないので普段着で行ったけど、招待客はほぼ黒い服、「そっか、招待でも目立ってはダメなんだ」と後悔する
いきなり背広が必要になるとどうしますか?
国会の本会議場では上着が必須なので、会社に背広を置いています。僕はチノパンにカッターというのが定番で、これにブレザーを着れば大体の場所に対応できます。若手はジーパンにTシャツの人も多いです。
服装で一番たいへんなのは?
僕は経験がないけど、ノーベル賞の授賞式に同行する時は、本当の礼服が必要になるそうです。みんな持っていないのでレンタルするみたいですが。最近では天皇陛下の即位の礼で皇居に行った時、上下ダークスーツ着用というのがありました。雨に打たれて大変でしたが。