映画やドラマがクランクアップすると「番宣」と呼ばれる、報道向けの取材日が設けられる。大体がスタジオかホテルの会議室などを宣伝会社が用意して、そこに僕たちが申し込んで撮影と取材を行うことになる
若手男性アイドルなどは女性ファッション誌の表紙で掲載すると、増刷になるほど売れることがあり、そういう番宣の場合は申し込みが殺到する。あまりにも多い場合は、発表媒体の発行部数や知名度を見ながら宣伝会社が選択するとの話だ
僕らからすると有名人を効率よく取材できて、宣伝会社からすると広告費を払わずに映画やドラマの宣伝ができることになる。よくいうwin winの関係なんだ
以前、若手アイドルの映画の番宣が都内のスタジオであり、信じられないことがあったので紹介したい
僕は番宣の現場には45分くらい前にスタジオ入りすることにしている。ストロボのセットは15分くらいで終わるけど、番宣には「押し」「巻き」というのがあって、15分くらいの進行のずれがあるものだ。前の取材がキャンセルになったとしても30分くらいの「巻き」なので何とか対応できる時間にスタジオ入りするのだ
都内のスタジオで行う場合は、スタジオスペースを2社でシェアしながら順番に撮影する場合が多い。その麻布にあるスタジオも1フロアに2つのスタジオがあり、同時に4社がセットしたり、撤収したりしながら、そこをアイドルが巡回する形だった
その日も45分くらい前に「おはようございます」と言って、使うスタジオを聞くと、いきなり緊急事態が発生した。なぜかお姉ちゃんのカメラマンがスタジオの全部を使って準備をしている
「2社シェアだから縦長に半分ずつ使いましょう」というと
お姉ちゃんはいきなり思考停止状態。「え?ここでセッティングを変えると分からなくなります」と泣きそうな表情だ。たぶんシェア自体も知らず、自分のセットだけで手いっぱいなんだ。これじゃ話が進まない

ふつうはこのようにシェアして白ホリを分け合います
15分くらい「巻き」が入って横ではすでに取材が始まっている。あと20分くらいで確実に撮れるセットを組まなくては自分の撮影の番が回ってくる
ここで権利を主張して、僕の後に撮るお姉ちゃんを排除する手もあったけど、そんなヒヨッ子のお姉ちゃんをいじめるのも可愛そうなので、僕はスタジオの横壁を利用して、直角に撮ることにした

仕方ないので下手の白壁を使うことに。これじゃ上半身しか撮れない
でも僕のライトスタンドの位置に、お姉ちゃんの三脚とカメラがあるので「撮影が後なんだから移動して」というと、それも撮影位置が分からなくなるのでできないという。そもそもスタジオで三脚を使っていることがおかしいのだけどね
「このレベルの人も同じ土俵にいるのだ」
仕方ないのでライトスタンドをお姉ちゃんのカメラすれすれに置き、写真はけっこう良いのが撮れた。撮影中、お姉ちゃんは、カメラと三脚が動かないように必死に押さえていたというのだから、これはすでに笑い話じゃないか
お姉ちゃんに依頼したクライアントにクレームを言えば、以降はお姉ちゃんに仕事の依頼が来なくなるだろう。でも僕は何事も無かったように撮影を終えて帰った
後日、知り合いのカメラマンに話すと、「僕だったら大喧嘩してもルールに従わせて移動してもらう」ということだった。僕はソフトな対応をしたので、お姉ちゃんはなんも学習しなかったけど、そのうち別のカメラマンがガツンと再起不能にしてしまうと思う。カメラマンって現場経験が必要だけど、最初のスタートがこれじゃね。成長する前にいなくなっているだろうね