雑感

時代が終わっった

6月1日、写真家の田沼武能(たぬま・たけよし)先生(93)が東京都中野区の自宅で逝去された。最近では武蔵野を撮り続け、「95歳までには写真展を行いたい」と会うたびに言われ、体力の衰えなどもみじんも感じさせなかったのに

田沼先生と言えば、日本写真家協会(JPS)の会長として写真界に長年尽力され、故写真家・木村伊兵衛先生の弟子としても有名な方だ。2019年には、ノーベル化学賞の吉野彰さんと並んで文化勲章を写真界で初めて受章され、業界全体に活気を与えてくれた

僕は、もう20年くらいのお付き合いで、仕事でも写真審査などを中心に30回くらいはご一緒したかなぁ。会うたびに前回会ったことを楽しそうに語るキレの良さはとても太刀打ちできなかった

10年くらい前に、田沼先生の事務所が東京都千代田区から同中野区へ引っ越した時に手伝いに行ったけど、想像を絶するネガを所有されていて、中でも木村伊兵衛先生から譲り受けたネガはどうするのだろうねぇ。戦前戦後の街の様子など貴重なネガばかり、日本写真家協会がどうにかすると思うけど

デジタル時代になり、画像データが量産されるようになったけど、それ以前の街角スナップ的な画像はあまり残っていない。写真を撮るって昔はハレの日の特別な儀式で、記念写真は結構残っているけど

デジタル時代になっても、精力的に最新機材を使って撮り続けた田沼先生だけど、やはり代表作は今じゃない。デジカメやスマホが生まれる前の、銀塩時代の作品が大事なのだ

時代的に小中学校のころまでは僕も良い写真が撮りやすかった。知らない路地裏などで「写真撮ってやるから出てこい」と言ったら、子供がウジャウジャ集まったものだ。見知らぬ人に撮られたとしても、新聞や雑誌に載るくらい。今のように悪意を持ってネットに拡散するなんてなかった時代だ

写真家の世界って有名になって写真審査や雑誌の執筆などで生計を立てるのが王道で、田沼先生も年間30本くらいの審査を担当していたんじゃないかな?審査も上手下手があって、田沼先生の選ぶ作品はバランス感覚が絶妙だったなぁ。全体の傾向を見て、コンクールの意図を理解して、過去の入賞作品の傾向を見て、総合的に判断するので安心して審査を任せられる。応募者から見ると、審査員はみんなエライ人ばかりなんだけど、僕から見ると審査員のレベル差が大きい

ともあれ、田沼先生を含め僕が密にお付き合いさせていただいた、管洋志先生、熊切圭介先生と亡くなられ、一つの時代が終わった感じだ。その下の40-50代くらいの先生もたくさんお付き合いがあるので、そういう写真家が20年後を背負って行くのだろうなぁ

カメラマン向きで写真家にはなれない僕には関係ない話だけど

本コラムを書き終えた7月8日、安倍晋三元首相が奈良市で選挙の応援演説中に銃撃され他界された。ご冥福をお祈りします。僕は直接お話しするようなことなどないけど、式典や選挙演説などを遠巻きに撮影することはあるので、悔しい思いしかありません。いろいろ意見があるようですが、リーマンショックのどん底から、リフレ派の意見を取り入れ、デフレ脱却、失業率の改善などに尽力した安倍さんの功績は大きいと思います。残念しか今は言葉が出ません

写真家とカメラマン

よく写真家になりたい話を聞くけど、それだけで食べるのは難しいので、最初は本業を別に持ち、休みを利用して作品撮りするのが良いでしょうね。でも僕から見ると、写真家は芸術的な感性はするどくても、単純にカメラに収める「撮影力」が足りない傾向にあります。なので毎日毎日、カメラマンとして「撮影力」を磨き、空いた時間で写真家として作品撮りするのが僕はベストだと思います。作家性だけ磨いても写真は撮れないし、生計は立てられないです

写真コンクールの審査料っていくらくらい

審査の規模にもよりますが、最優秀賞の賞金よりも高い審査料って少ないと思います。5ー20万円くらいで、平均して10万円くらいじゃないでしょうか。売れっ子写真家で年間30本やるとして、やっと年間300万円の売り上げにしかなりません。最近、プリントして応募する古来の写真コンクールは減り、ネットで応募が増えているので審査料はいっそう下がる傾向ですね

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