元「週刊少年ジャンプ」編集長の鳥嶋和彦さんが「ダイアモンドZAi2004年2月号」で面白いことを語っていた。ZAiといえば株やらFX情報のマネー誌なので、一線の編集者でもある鳥嶋さんの原稿も、マンガ家の金銭面視点で書かれている
鳥嶋さんが集英社にマンガ編集者として入社したのは1975年。当時のマンガ家といえば、出版社の安い原稿料で食いつないでいる、マンガの聖地「トキワ荘」を想像するような世界でした。それでも好きなマンガを描けるだけ幸せだったのだろう

その不遇なマンガ家の世界に光を当てようと鳥嶋さんが目をつけたのが「コミックス(単行本)」。昔の出版社は、単行本なんてオマケくらいに考えていたとのこと。それを鳥嶋さんは1980年に『Dr.スランプ』(第一巻)でオマケページを付けたり斬新な表紙にしたりで、大々的にプロモーションを行い、なんと発売日に初版20万部を完売したそうです
ここで「印税」の話が登場。1冊売れると定価360円の10%である36円が印税としてマンガ家に入る計算となり、20万部で720万円。100万部で3600万円。ジャンプの掲載が続けば10話で1冊ペースなので年間4冊出すことができ、年収1億円超のマンガ家がフツーに登場するようになった
鳥嶋さんが寄り添った鳥山明先生の「ドラゴンボール」なんて世界で5億部も売れているので、ざっくり1冊で50円の印税だとしても250億円、関連グッズ、アニメや映画の放映権などもある。連載を終了した今でも年間10億円以上の収益があると言われている

40年以上前に駆け出しの編集者であった鳥嶋さんの放った一手が、マンガ家を幸せにしたのはもちろん、それを起点として出版社の収益構造に大きな変化与えた。出版不況と言われるけど、集英社、講談社、小学館など大手出版社は好調なマンガで最近は息を吹き返しているものね。「原稿料」じゃなく今のコトバでFIRE(経済的自立)する「印税」に目をつけた鳥嶋さんはスゴイ!
ところでカメラマンに「印税」があるかって? もちろん本などの出版で印税契約をすることがある
一つは自身の写真集を出版する場合。出版社との間でいろんな契約があるけど、大体7%くらいの印税契約が多いと思う。そんな1万部なんて売れる写真集なんてマレなので、1500円が5000部売れたとして印税は50万円ほど、撮影の経費も出ない
今の主流は「印税」や出版社とはサヨナラして、自身で印刷所に手配して、写真集を制作。ECサイトを用いて直販する手法。人気ユーチューバー写真家などは1冊4000円くらいでもよく売れ、利益率も50%くらいは確保できると思うので5000部売れれば1000万円の利益だ。ちょっと夢のある話だね

もう一つは、アイドルの写真集などを受託撮影し、撮影料として「印税」がはいるパターン。人気アイドルだと重版出来を重ね2万部くらい売れることもある。7%印税契約で2000円の写真集だとすると280万円の印税となる。これも夢のある話なんだけど、今は出版不況で写真集が売れない時代、「印税契約」せずにコミコミの撮影料として契約する場合が多い

いずれにしろ、今はカメラマンが「印税」でFIREすることはマレだと思うね。記録としては1991年に篠山紀信先生が撮った「宮沢りえヌード写真集『Santa Fe』」が発行部数155万部で歴代記録。定価が4369円なので印税率が10%としてなんと収入は6億7千万円だ。ただ91年はバブルの余韻残る世の中イケイケ状態、6億円稼いでも「ふーん」という感じだったね。当時のフリーカメラマンがうらやましい
#1月4日、篠山先生が亡くなりました。最期まで一線の写真家として活躍された篠山先生、ご冥福を心からお祈り申し上げます。