これまでに無かった革新的な製品が、いろんな企業が参入することにより品質、性能、ブランド力などに差のない「汎用化」への道をたどる。消費者から見ると「何を買っても同じ状態」のことを「コモディティ化」と呼ぶ。今日はカメラのこの現象について語るね
1999年、ニコンからデジタル一眼レフのD1が発売された。すでにコダックからもデジタル一眼は出ていたけど、250万円は高すぎた。D1はそれを上回る性能で65万円だったので驚いた。僕を含めカメラマン連中は出遅れまいと「ニコン貧乏」にまっしぐらだった
最近、デジカメの性能は行き着いて、進歩が遅くなった。今では5年前のボディで撮影してもクライアントから文句を言われることはない。買い替えサイクルが延びて経費が抑えられるのがうれしい。僕なんて最近はスポーツを撮らないので、そんなに最新機種は必要としない。でも瞳AFなどが便利なので、そこそこ新しいボディを使っている感じだね
D1の発売から25年、デジカメもご多分にもれず、メーカーによる性能差がなくなり「何で撮っても結果はほぼ同じ」という「コモディティ化」が進んでいる。ニコンでいうと、約60万円のZ9と20万円のZ6で結果に大きな差はでない。Z9の方が無骨で仕事をやっている感じはするけどね
「コモディティ化」で困っている代表選手はスマホ業界かな。iPhoneなんてカラーバリエーションを変えたり、内蔵カメラの性能を上げたりでアピールするけど、一部にしか刺さらないのか売上は良くない。新機能が盛られているわけじゃ無いものね。逆に伸びる可能性があるのがnVIDIAなどのグラフィックボードだろうね。AIやスパコンの需要で奪い合いだ。今後も処理速度、消費電力などの進歩が続くので先は長い
カメラ業界で「コモディティ化」の波にのまれているのがキヤノンだろう。ミラーレスのフラグシップ機を持たないのはキヤノンだけで、さすがに7月から始まるパリ五輪に合わせて投入するだろうと言われていた。これが結局、新機種が間に合わないという。進化の伸びしろが減り、目新しいカメラが生み出せないのだ。繋ぎ止め対策で来年発売予定のフラグシップであるR1の開発発表があったけど、グローバルシャッターが間に合わないらしく、他社と比べると周回遅れの印象を受ける
キヤノンのていたらくは、五輪でそっぽ向かれて当然なのだけど、そうでも無いらしい。少々機能的に劣っても結果に差が出ないので、慣れた機種を使う傾向が強いからだ。トラック競技で走者を追いきれないカメラなんて最近は聞かないものね。そうなると少々旧型のボディでも揃えているレンズを優先するだろうなぁ
ニコン、キヤノン、ソニーとフラグシップ機で争って来たけど、グローバルシャッター化で出遅れたキヤノンは少し脱落気味。ソニーはセンサーを開発していて、抜きん出るのは当たり前。それを利用するものづくりのニコンが迫り、キヤノンはそれに続く感じだ
いずれにしろ、デジカメのコモディティ化が進み、カメラは儲からない製品になっているのは確か。現時点ではキヤノンのシェアがトップだけど、最もビジネスライクな同社はデジカメ事業をフェードアウトさせ、儲かる事業に集中するかも知れないね
合わせて黎明期からコモディティ化するまでのデジカメ進化に付き合えた僕は幸せだと思う。ただし、カメラマンも機材のおかげで「誰が撮っても同じ結果が得られる」という「カメラマンのコモディティ化」も進んでしまった。その先にある差別化を考えるのが大変だ。新型カメラマンなんて発売できないものね