雑感

タイトル戦

もう30年以上前の話だけど、将棋のタイトル戦の取材に同行したことがあった。当時の僕のシゴトは技術社員で入社したので、取材現場から写真を電送するというもの。カメラマンが撮った後の写真を紙面化するまでが担当だった。いろんな取材現場に出向くので技術職では花形の担当だ

銀塩フィルムで撮影したあとに現像をして、デカい写真電送機にフィルムを入れる。画像情報が「ピーヒョロヒョロ」という音声に変換され、東京の受信機から写真が出てくるという仕組みだ

携帯電話もない時代で、電送には電話回線が必要。公衆電話も無いような事故現場ではいきなり民家に行って回線を貸してもらうことも。今では考えられないけど「ご苦労さま」と言いながら協力してくれる家も多く、物珍しさで近所の子がたくさん集まってきたこともある。さすが昭和だねぇ

僕は「現像ができる」「電話工事ができる」にプラスして「写真が撮れる」など都合の良い存在だったのでタイトル戦に限らず、「何でもできる技術社員」として事件事故の現場などに出向くことが多かったなぁ

タイトル戦は地元の有名旅館などで開催される。旅館としては箔が付くし、大盤解説で宿泊者が増えるメリットもある。対局者や関係者はセキュリティのために1フロアを独占し、僕も分不相応な広い部屋にひとりで宿泊したなぁ

今では考えられないのだけど、前夜祭の後に対局者と宴席が設けられたり、2次会でトランプや麻雀をするようなこともあった。夜中まで麻雀をして二日酔いで対局なんていう話も聞いたことがある。時代を感じるねぇ。今じゃ前夜祭が終わるとすぐに個室に戻るだろうね。関係者も無理に対局者を引き止めてトラブルを起こしたくない

対局室の横に関係者控室というのがあり、そこでのドラマも面白い。2日間のタイトル戦の場合、初日は関係者も時間があるので、立会人のプロ棋士と将棋担当記者との対局が始まったりする。2枚落ちくらいで始まるけど、意外と元奨励会などの記者が多く、熱戦になることが多い。終局した後に感想戦が始まったりして、裏のタイトル戦もそれなりのドラマがあったりする

あと控室ではタイトル戦の状況判断で駒を並べることが多い。プロ棋士たちが熱く意見を語り合う中、ふらっと対局者が入ってくることがあり、そうなったら大変。一瞬で駒を崩し、研究を見られないように対局室がざわつく。今の若手棋士は気遣うので入る前に「入ります!」と一声あるような気もするけど

終局の時間には気をつける。持ち時間がなくなる夕方に終局することがほとんどだけど、予想外に早く「投了」となることもある。すぐに対局室になだれ込んで、感想戦などの取材が始まるけど、気を抜いていてタバコを買いに行っていたりすると大変だ。終局直後の表情は撮れないし、写真電送は遅れる。そういう時のためにトイレ以外には控室を離れられないのがタイトル戦のつらいところだ

あまりにも早く投了すると関係者がバタバタするのを察してか、今の若手棋士は持ち時間を使い切り、頃合いをみながら投了している気がする。空気を読むのがうまいというか、想定外のことで目立ちたくないというか、これも時代を感じるねぇ

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