横浜市・JR桜木町駅の周りは観光客を呼び寄せるために再開発が進んだ。10年くらい前までは古い倉庫が残り、被写体として写真愛好家を楽しませてくれた。その中でもひときわ目立つ建物が「帝蚕倉庫」だった。倉庫のカベは、時代を感じさせるツタで覆われ、前を通りかかったカメラマンなら撮らないという選択肢はないだろう
大正時代に建てられたこの倉庫は、2016年に取り壊され、今は近代的なビルが建ち並ぶ
下の写真は2004年10月1日に撮影したもので、秋晴れの順光の中、ツタが見事に生い茂っている。面白いのは画面左下の壁際に針葉樹が育っていて、それを避けるようにツタが生えているので、まるで絵本を見ているようなのだ
帝蚕倉庫
まるで絵本のようだこのカットは600万画素機のニコンD70に12ミリ(フルサイズで18ミリ相当)のレンズを付けて撮影したものだ。当時はAPS-C機が主流で、ワイドレンズも12ミリが最も広角だったので、横位置の撮影でなんとか画角に入る感じだ。今はフルサイズが普及し、高性能な14ミリのレンズもあるので、余裕で撮れるだろうけどね
撮影から20年が過ぎ、なんとなく「帝蚕倉庫」を思い出し、今の補正で別の作品が作れないかリメイクに挑戦した。画素数が今の基準では低く、色味も良くないがRAWで残しておいたのが良かった。フォトショップのRAW現像でスーパー解像度を選択すると、解像度が4倍の2400万画素にスケールアップできた。色味も画像処理が進化したのか、今のニコンの色味に近く現像できた。これなら半切くらいで展示しても問題ないね
画角の都合で横に撮ったが、今のフォトショップなら青空を自然な感じで塗り足すことも可能だ。そもそも当時のデジカメは主流ではなく、しっかり撮るなら銀塩のブローニーみたいなところがあった。だからデジタルで塗り足すのは禁じ手とされていた。新聞掲載でそんなことしたら大問題、僕も考えたことすらなかった。2004年でデジカメを使い込んでいた写真愛好家なんてどれだけいるだろうね。そういう時代だったのだ
青空を塗り足してみた今も新聞掲載では「あるものを消したり、無いものを入れ込んだり」するのは禁止だけど、少し変化があり画角に入らなかった青空を塗り足して入れるのはギリギリセーフだろうね。デスクによっては「ダメ」というかも知れないけど
雑誌や広告の世界はもっと進み、以下のように完全に建物をAIに描かせても大丈夫だ。実際に塗り足した画像が世の中に出回っている
建物を塗り足し、左右に青空を入れる。インスタ風?今回、古い画像をリメイクしてみて分かったことは、撮影時点でベストと思った画像も時代と共に評価軸が異なってくるので、大切にRAW画像を保存することは大切だね。報道カメラマンは撮った写真をすぐに紙面で消費してしまうので、リメイクするなんて発想がない。過去を掘り返せば現在において高い評価を得られる写真があるはずで、ある意味もったいないかも知れないね