春になると思い出す。2006年ごろから数年間、業務で写真撮影のツアーを担当していたことがあった。写真愛好家向けなのでバスで撮影地に行くパターンが多かった。当時はリーマンショックなどの影響もあり不景気の時代、インバウンド需要も少ないので、バスのチャーター料金は1日7万円くらいと安かった。なんと参加費も日帰りで5000円ほどで募集でき、「報道カメラマンと行く撮影ツアー」とチラシに書けばすぐに予約で埋まった
ツアーの中でも人気だったのが「桜ツアー」。同時期に2-3回開催することもあったほどだ。ただ、桜ツアーは難しく、設定日に予定地が満開になるとは限らない。そこで編み出したワザが「ミステリーツアー」と題して、撮影地を前日に調整すること
例えば募集時点で鎌倉市を選ぶツアーを見かけたがそれは間違い。一帯が同じような開花状況なので撮影ツアーには向かない。よく行ったのが群馬県で、山が多く標高を変えると必ず満開の桜に出会えるのだ。運が良い時は、低地で桜吹雪、高地で満開の桜、帰り道で芝桜を楽しめたツアーもあった
ただそのころブームだったミステリーツアーも最近では耳にしない。理由は運転手の業務環境改善のためだ。当日にタクシーのように行きたい場所にバスを走らせるのは運転手からすると大変なことだ。ルートや駐車場などの確認すべきことは多い。早い段階から訪問地を決めて変更ができない場合が増えている
ミステリーツアーで重要な点がある。「集合場所と時間のアナウンス」だ。当然、細かい予定表が配られていないので、いきなり知らない場所に行って、撮影後に集合することになる。高齢者も多いので集合場所は「バス解散」「バス集合」が基本。そうすれば混乱も少なく、疲れた場合は早く戻り休憩もできる
集合時間のアナウンスも「12時、あっ、やっぱり12時15分」など言い直しはNG。これも高齢者は混乱する。この場合は「12時、あっ、多少遅れても大丈夫ですよ」くらいに時間のキーワードは1回しか言わないのが基本なのだ
その他「1時間に1度、必ずトイレ休憩を入れる」「撮影ポイントはバスから300メートル以内」「携帯番号を把握しておく」など高齢者への配慮は多い
それだけ配慮しても、想定外はやってくる。あるツアーで僕が集合場所で待っていると、携帯電話に「遅れます」とショートメッセージが入る。それでも集合時間にはきっちり集合人数が揃う。参加者に聞いても連絡した人はいない。気になるのでコールバックしたが、なかなか繋がらず間違い電話だと分かったのは出発予定時刻の20分後だった
「体調を崩す」「参加者同士でバチバチのケンカになる」「機材を紛失する」「撮影に夢中で戻ってこない」など想定外の事態は多い。僕からすると撮影ツアーはいつでも「ミステリー」なのだ