昔の銀塩時代の写真を眺めていると時代背景が現れて面白い。つい先日も僕の撮影じゃないけど「社長の日常に密着する」という企画のポジフィルムを見る機会があった。撮影された80年代は写真雑誌の全盛時代、そこで8ページほどの掲載で人物を格好良く紹介するような特別企画って人気だった。あこがれの人の知られざる日常なんて面白いものね。今のようにYouTubeチャンネルもないので、日常を紹介するには印刷物のグラフ特集が最適だったのだろうね
ポジフィルムには「パイプの煙をくゆらせながらソファーで読書する経営者の姿」「夫婦で思い出の地に赴く姿」などが焼き付けられていた。「どれだけ金と時間をかけて撮っているねん」と思える豪華なカットばかりだ。紙媒体が売れていた時代なので経費もかけられていたのだ。そういう企画は腕の良いカメラマンが投入される。企画によってはフリーカメラマンが招へいされ、その人の感性でカットが収められることもあった
どれも当時としては最高の瞬間ばかりだけど、細かく見ていると突っ込み満載なのも面白い。カラーで残されたポジフィルム、例えばパーティでのストロボ撮影では手前は普通に撮れているのに背景の色がおかしかったり、明るさが極端に暗く会場の雰囲気が分からなかったりする。銀塩フィルムなので感度が低く、フィルムの色温度特性が変えられないから仕方ないのだろうな。当時は、「撮れていること」が優先されたので、結果を判断するデスクも細かいことは言わなかったのかもしれない
デジタルになった今はいいよね。色温度はその場で調整できるし、感度も格段に上がっている。何よりも良いのは撮影結果がその場で確認できることだ。安心して撮影に集中できるし「撮れていませんでした」という昔はよくあったトラブルも皆無だ
それと新人を見ていると撮影力の進歩がすさまじい。銀塩時代だったら、スタジオ助手、カメラマンアシスタントなどを10年近くかけて一人前に成長したものだ。今じゃカメラ経験1年くらいで活躍する副業カメラマンなんてたくさんいるものね。「機材の進化」が最大の援軍だろう
そうやって「撮影力」は全体的に向上しているわけだけど、見落としている部分がある。それは「絶好の場面にいないと撮れない」という当たり前のことだ。今、社長のグラフ特集を撮るとしても、プライベートを見せたくない人は増えているし、屋外では撮影許可の申請などがうるさい。いくらきれいに撮れる機材があっても、前準備なしでは良い場面は撮れないのだ
「撮影力」とひとくくりに語ってしまったが、中身は「撮影技術」「事前準備」「その場の判断」「運」などに分かれるのかな。YouTubeを見ていると「撮影技術」にからめて「AFが速い」「高感度に強い」など機材紹介をする人がほとんどだ。
最新のデジカメで撮影技術は底上げされたけど、それ以外の部分で手を抜いていないか?昔のポジフィルムが教えてくれた