仕事で月に1-2回程度、ティルト機能を備えた特殊なレンズを使っている。ティルトレンズと言ってティルト機能でレンズの前玉部分を傾けると、同じ絞り値でピントの深さを自在にコントロールできる。料理などを斜めから撮る時、全面にピントを合わせたりできるすぐれものだ
写真1は料理を普通に撮った例、いくら絞っても全面にピントは来ない。これをティルト機構を使って撮るとピントが全面に来る(写真2)。ちなみに料理写真はピントの深さをいろいろ変える必要がある。コース料理を全部紹介したい場合は手前から奥までピントが必要。逆に同じ餃子だけが並んでいるような場合は、手前の餃子だけにピントを送り、奥はぼかしたほうが美味しそうにみえる。いろんな料理を撮る場合、ティルトレンズはとても便利なのだ(写真3=概念図)
写真1、ピントが浅い
写真2、ピントが深い
写真3、ティルトの概念図料理に限らず、人物や風景撮影にも使える。ピントを極端に狭くして女性の瞳にピントを合わせるととても幻想的な写真になる
写真4はピントを浅くして街を撮影しているので小さな箱庭のように見える。同じような作品を撮り続ける本城直季さんが有名だ
写真4、ピントを浅くするとミニチュア風に持っているのはニコンの85ミリのティルトレンズでFマウントと言われる一眼レフ用だがアダプタを介してミラーレス機で使っている。20万円近くしたものの、精巧に作られており僕としてはずっと使いたいレンズの1本でもある
でもこの便利なティルトレンズ、ニコンは販売を中止してしまった。ミラーレス用のティルトレンズが出るという噂はあるが発売されない。理由は簡単で、ティルトレンズは構造が複雑で高価になる割に需要が少なく売れないからだろうね。同じようにピントを深く撮りたい人は、普通のレンズでピントの位置を変えて複数枚撮影し、それを合成すれば良い。フォーカスシフトといって、デジタル化が進みパソコンで解決できる問題は多い。なので熱望する声も小さくなっているだろう
ミラーレス機が主流になった現在、ティルトレンズを設計すれば最高の性能のものが作れるはずなのに惜しい話だ。レンズと撮像面の間に邪魔なミラーがないので最高の性能が引き出せるのだ
写真学校に入学すると蛇腹の大判カメラを使ってティルトやシフトといったレンズ効果を勉強するという。デジタル全盛の今、知らなくても大体のことはできる。ただ裏を返せば写真に理解の深いクライアントさんでも知らない人がほとんどで、現場でティルトレンズの良さを語ると興味深く聞いてくれる。理屈が難しすぎて理解してもらえないけどね。でも僕としては手間をかけて撮影している様子が伝われば満足でクライアントさんも特別感が増すというものだ