1980年代、ファインダーでピントが合わなくなり、一線から退く先輩カメラマンを多く見てきた。1985年にミノルタから世界初のAF搭載一眼レフカメラ(α-7000)が発売されたが、合焦速度や精度の問題で報道やスポーツの現場では使い物にならなかった
当初のAFは暗所で迷ったり、ピントが奥に抜けてしまったりしたので、瞬時に手動でピントを合わせる必要があったのだ。そこでピントの山が見えなければ、撮り手を監督する立場に昇格するのが写真業界の流れだった
それも1990年代に入るとAFの性能が上がり、老眼が進む40歳代以降のカメラマンでも一線で仕事を続けられるようになった。と、思って自分もその世代に突入したら、想定外のことが起こった。AFでピントは合うけど、暗い場面で撮る時に一眼レフのファインダーでは何が映ってるのか見えづらいのだ
例えば薄暮の中、ポートレートを撮る時に「モデルの微妙な視線が分からない」「天体撮影で星空が確認できない」、など先輩方が通った道を僕もたどることになる
ところが、この問題もミラーレス機の出現で解消する。ミラーレスは暗い場面でも暗視カメラのように明るくファインダーに映し出してくれる。かすかな星空であっても確認できるのだ。更に最近では瞳AF、被写体認識などの機能により撮影が簡単になっている
ただ、カメラの性能が上がっても最終判断はカメラマンが行うので「視覚」はとても重要。ピント、構図とも完璧でも色味が合っていないと写真は成り立たない。よく聞く話だが、写真コンテストで高齢の審査員が選ぶと彩度の高い作品が選ばれやすい傾向にある。おそらく白内障が進み、色を感じにくくなっているので彩度の高い作品が選ばれるのだと思う。白内障の手術をしたカメラマンをたくさん知っているけど、異口同音に「急に世界が鮮やかになった」というものね。視覚は視力と色覚の総合的な要素で決まり、自身の視覚特性を知ることはカメラマンとして大事と言える
よく健康診断で視力検査を行うが、意外と色覚の検査はない。ネット検索で「色覚テスト」と打ち込めば、微妙な色の違いを当てるクイズみたいなものが多く出てくる。「中に何が見えますか」「一つだけ異なる色のものは」などが表示されるというもので、これが重要なのだ。僕もいくつか解いてみたが、幸い問題はなし。逆に上位1%くらいに入るスコアだったので少しうれしくなった
じゃあ視力の方は老眼でダメじゃない?と思う人もいるでしょう。僕は左眼0.7、右眼1.2というバラバラな視力だ。この視力差に脳が慣れると左右のピントを補い合う「モノビジョン」という近くも遠くも見える状態になる。おかげで僕は老眼世代になっても眼鏡なしでパソコンに向かい、撮影では遠くを見ることができる
僕らおじさんカメラマンが気をつけるべきは「色覚」だろうね。前回のコラムで話したように間違ってAdobeRGBで撮ってしまって、パソコン上で「色味がおかしい」と気づけるかどうかなど、色の僅かな変化に対応できることが大事だ。銀塩時代は写っているかどうかが最重要で色味は問題にならなかったが、デジタル化した現在ではわずかな色味の違いが大きな問題になる。まだまだデジカメの色味はばらつきが多く、それを判断する人間の眼は重要ということだ
<参考テスト>
以下のチャートを見てどう感じるだろうか?

3つの正方形が横にならんでいることが確認できれば合格
真ん中の正方形が、僕が画像補正する際に基本とする日本人の肌色、左が色白、右が少し日焼けした肌になる。