道具

クセになる巨大三脚

日本が30年を失う前の80年代、山岳や河川敷で巨大な三脚を使用する写真愛好家をよく見かけた。世界初の軽量カーボン三脚をジッツオが発売したのが1994年。当時の重い金属製の三脚は、体力を消耗させ山岳では命を危険にさらすほどだ

まだ銀塩全盛の90年代、風景写真の巨匠・竹内敏信先生(2022年、78歳没)の撮影会を主催したことがあった。先生はある参加者の三脚を見て

「こんな割り箸みたいな三脚はダメだ」

銀塩時代は重い三脚を持ち込んでこそ、その先に秀作が存在するような価値観があった。確かにブローニーカメラと巨大三脚を持ち込み、先生のフレーミング指導を受けた参加者は「竹内風」の作品に仕上がっていた。SNSで比較されがちな現代目線だと「オリジナリティがない」と敬遠されるパターンだけど

時代は移ろい、デジカメが手ブレ補正を標準搭載。貴重なフィルムに「一写入魂」だった撮影も、今やメモリに書き込みまくる「多写入魂」。考える前にシャッターを押すスタイルが主流になった。場面ごとにレンズの画角を変え瞬間を撮りまくるので、むしろ三脚は「機動性の敵」と見なされる流れだ

では三脚が売れないかと思いきや、出荷台数ベースでは順調に伸び、今年は4,500万台以上と予測されている。ただしミソは「出荷台数」。伸びているのは卓上サイズや折り畳み式の小型モデルだ

事務所近くの赤羽橋。人気の東京タワーを背に外国人観光客が三脚を立てているが、そのほとんどがスマホ用の小型モデル。プロのような大型三脚はめったに見かけない

じゃあ今でもプロがあえて大型三脚を使う目的が分かるかな?、

①構図の固定
②精密なピント合わせ
③クライアントへのアピール

が主な理由だけど、僕の場合は①の理由が多いかな

ある日、僕が料理撮影をしていると、ミニコミ誌の子ども記者が取材に訪れた。撮影方法を説明しながら

「なんで三脚を使うのでしょう?」

と僕が聞くと、狙い通りの「ブレないため」という答え。その後、固定したカメラの画角内に料理を一皿ずつ並べる様子を見て、豆記者たちは「なるほど」とつぶやいた。これなら安定した画角で撮れるものね

三脚はカメラの登場当時から存在し、現在では中国製が安くて品質もかなり良い。しかしその価格は、中国政府の為替介入による人民元安で保たれているとも言われる。もし人民元の為替レートを市場に委ねられるとすれば、中国製品の価格は1.5-2倍になるらしい。そうするとカーボンパイプの世界シェア80%近い日本が再び競争力を持つかもしれないね

大型三脚が売れなくなっても僕は仕事で使い続けるだろうな。そうなると永田町で三脚をライフルと勘違いされ、職務質問を受ける僕の姿も健在ということだ。もう慣れたので焦らなくなったけどね。どうせなら、外国人観光客にも職質してくれないかな。割り箸みたいな三脚を公道の真ん中に立てている方が危険だと思うけど

人気の卓上三脚、僕はストロボを乗っけて使っている

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