僕は小学校の頃から「ニコン使い」。当然ストロボも純正品を使ってきたが、10年くらい前にProfotoとNissin製品を使うようになった。そういう純正ストロボから中国生産のストロボメーカー製に乗り換える流れが止まらない。まず価格面を挙げる人もいるけど、本当の理由はもっと深いところにある。理系の現場目線で語ろうと思う
ニコンに至っては公式にProfoto、Nissinとの「協業」関係を発表している。この「協業」とは、純正品もあるけどProfoto、Nissinのストロボも問題なく使えますよということだ。事実上の白旗宣言だが、「協業」を担保することによりスタジオユースの高いProfotoユーザーなどを取り込む狙いがあるのだろうね
80年代、TTLが登場すると複雑な露光に対応するために「純正=最適解」で他に選択肢がなかった。特にニコンのストロボは秀逸で、関係者の話によると、ストロボに熟知した技術者がいて、一時代を築いたとのこと。その技術者が定年を迎え、技術力で中国に追いつかれ、価格競争で敗れ純正品が売れなくなったと同社で語り継がれているらしい。これは都市伝説に近いものがあり、実は分岐点は90年代にさかのぼる
分岐点1
<90年代のマイコン化の遅れ>
純正品は自社製品だけに対応すれば良いので、決められた動きをする部品を組み込めば良かった。90年代は大きな分岐点で、ストロボに小さなマイクロコンピュータ(マイコン)を組み込み、ソフトで動きを制御する仕組みが主流になった。これはストロボメーカーにとっては追い風で、基本となるストロボにマイコンを組み込めば、ソフトでニコン用、キヤノン用などが簡単に作れるようになった。マイコンはすばらしく、新発売のカメラもソフトの書き換えだけで対応できる。対する純正品は自社製品だけに対応すれば良いので、マイコン化が遅れてしまったのだ
ちなみにこのマイコンのほとんどが日本発のTRON(トロン)というOSで動いている。メモリ消費が小さく、レスポンスに優れているので、数百円の低スペックのマイコンでも問題なく処理できる。とても日本人として誇らしいことだ
分岐点2
<ワイヤレスシステム対応の遅れ>
2010年代後半、広告や芸能人の撮影では、5灯くらいストロボをセットし、それらを巧みに操作する「多灯ライティング」が主流になってきた。それらを手動で調整するのが大変なので、無線のコマンダーでストロボを操作する「ワイヤレスシステム」を搭載するストロボメーカーが現れてきた。そのトップランナーがGodoxやProfotoで、逆にコマンダーが使えないストロボは現在では敬遠される傾向にある
ではニコンやキヤノンはどう動いたか。この2社にとって報道関係こそ重要なユーザー。報道はクリップオンでストロボを使うことが多く、ワイヤレス化への要望が少なかったのだろうね。ここでストロボメーカーに遅れを取ることになる
分岐点3
<続く日本に不利な為替レート>
85年のプラザ合意以降、日本は円高の影響で工業製品を安く輸出するのが難しくなった。相対的に中国製が安くなり、ストロボも割安な中国製造を多くが買うよね。プラザ合意による「必然の結末」だったと思う。ただ、中国もGDPで世界2位の経済大国に成長した。そうなると中国の通貨である人民元も高くなるのが通常の動き。しかし中国政府による為替の介入や不動産の不良債権問題などで人民元が安いままなのだ。現在は1人民元が20円くらいのレートなんだけど、適正レートは1人民元が40円くらいだと言われている
要するに中国製のストロボの価格が2倍くらいになるのが自然の流れと考えられている。もし、価格がそうなれば日本製も十分対抗できるのになぁ
こんな感じで、安価で高性能な中国製ストロボが席巻しているが、最近では旗色が変わってきたようだ
若いカメラマンによると「見たままに撮れるLED照明が使いやすい」というのだ
ロケなどでは大きく重く光量の足りないLED照明では役不足だと思うが、「見たままに撮れる」というメリットの方が大きいのだろうな。僕は長年慣れ親しんだストロボで「想像したままに撮れる」ので不便を感じないが、LED照明の出現はストロボにとって次の分岐点になるだろうね
そのLED照明でも最近は中国製が安く売られ勢いづいている。ただ基幹部品である高輝度LEDは日本製の性能が高くて他国は追いつけないそうだ。日本人による青色発光LEDの発明によって実用化が進んだLED照明。これも僕が日本を誇らしく思えるポイントだね
僕が小学校の頃から使い始めたニコンF。当時大人数で記念写真を撮る時はストロボじゃ光量が足りなかった。フィルム感度もISO100が普通で、そんな時はマグネシウムを発火させるフラッシュを使って撮影したものだ。それがストロボに変わり、今はLED照明に変わろうとしている
いくら照明が変わろうとも、良い写真を撮りたい気持ちは変わらない。
「見たままに撮れる」LED照明じゃワクワク感が足りない。
結果が撮影後に分かるストロボ照明は、「想像した通り」に撮れるからこそ、そのワクワク感が倍加する。
だからこれからも「マグネシウムのような閃光を放つワクワク感」のために、僕はストロボを使い続けるつもりだ