雑感

日本のボルトが緩まない理由

「トントン」とリズミカルな音、無駄のない流れるような動き

8月下旬のまだ気だるい空気の中、そばを切る音が爽やかに響く

打ち手は創業236年の「更科堀井」(港区元麻布)の九代目店主・堀井良教さんだ

その無駄のない包丁さばきを凝視するのは米国・名門料理大学の学生ら約20名

料理界のサラブレッドたちは「クールジャパン」をテーマに訪日したという

「自身の代で変えたことは?」の問に

「大きな変更は何もないね、先代の極めた技術を継承するだけ」と当たり前のように答える

来年、米国は建国250周年を迎えるが、ほぼ同一期間、そばを打ち続けた事実はさすがに理解できないのだろうね

カメラ業界で日本技術力が際立っているが、これも日本人の技術伝承が大きく影響している

大手カメラメーカーの技術者を見ていると、レンズだったらレンズ、ストロボだったらストロボの製造設計に携わり担当が変わることが少ない。だから技術を熟成させながら伝承できるのだ。だから技術者が突然営業に異動するなんて聞いたことない

カメラは技術伝承の集合体だ。レンズ1枚にしても、設計図だけでは高性能が出せない。図面に載らない条件が山のようにあり、それを日本のメーカーは技術伝承で乗り越えている

業績が悪くなれば、人員削減、配置転換で乗り切り、目先の利益を追い求める他国の体制は技術伝承を難しくしている

創業236年のおそば屋さんをリスペクトする日本人は技術伝承と相性が良いのだ

究極はどこにでもあるボルトとナット(写真)

ハードロックナットというほとんど緩むことがないボルトとナットを日本のハードロック工業が作っており、どこも技術が追いつけない。模倣品は出回るものの製造過程の「ブラックボックス」はどこも模倣できないからだ

普通数十円で買えるボルトとナットだがハードロックナットは10倍ほどする

ただ自動車、新幹線、レール設備、スカイツリーなどに使用されており、メンテナンスや信頼性を考えると決して高くないとは思える

これも図面が公開されているけど、微妙な表面仕上、表面のメッキの具合など経験が大きく左右し技術伝承なしでは成り立たない

そういうマニュアルにない部分を経験値で埋めてゆくことを「経験工学」と呼ぶそうだけど、それを何代にも伝承できる日本は島国ゆえの強みを活かしていると思える

そば屋も町工場も巨大メーカーも基本は同じ、ニンゲンが一生で蓄積した経験を技術継承することが大事

ボルトが緩んだような僕の頭でも容易に理解できることだ

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