雑感

技術だけで勝ちたかったけど

音楽用のイヤホンの総本山と言える「e☆イヤホン」秋葉原店本館に初めて行った。少し大きめのショップを想像していたが、7階まで全フロアがイヤホンを含む関連商品で埋め尽くされ、世界最大級の規模を誇るらしい。新品販売はもちろん、中古、修理など様々な対応があり、基本は視聴して納得して購入できるのが特徴だ

店内は若者でにぎわい、秒で僕の冬眠していた「音響ヲタク」に着火した。かつての1990年頃にバブルの崩壊とともにしぼんでしまったオーディオブームの面影はない。若者たちは新しい価値観で高級イヤホンやアンプ、プレーヤーなどを買い求めている。数万円は当たり前、数十万円もするものも売れている

1時間ほどデジタルオーディオプレーヤー(DAP)を聴き比べたが、定番のSony製品は全く勢いがない。中国の新興メーカーに押されまくっているのだ。音は上質で原音に忠実な再生だけど、スピード感やメリハリが効いている中国製が人気みたいだ。デジタルオーディオの世界ではSonyが一強だったのに勢力図が大きく変わってきている。Sony信者の僕としてはちょっとショックだが劣勢は明らかだ。DAPの世界では技術力よりも企画力に軸足が変化しているのだ

でもSonyって面白くて変な会社だね。リーマンショックの後、巨額赤字を出し主力の液晶テレビなどが売れなくなり「ソニーはもう終わった」と言われ始めていた。そのころ品川のソニー歴史資料館に行ったら完全予約制になり、僕の来館にあわせて近くの本社ビルから係員がやって来るような経費削減の徹底ぶり。逆に僕としては「終わっていないな」と感じた

振り返ると2012年が底で、エンタメ、音楽、ゲーム、半導体、保険、銀行などSonyグループは安定した収益を誇る企業体に変革した。また最近ではかつてのSonyの顔とも言えるテレビ部門をブランド名は残しつつ中国資本を主体とした構造に再編した。過去を引きずらない柔軟性の高い「捨てる経営」が強みのようだ

あえてSonyの弱点を挙げると各部門の連携ということだろうか。Sonyは携帯、小型のウォークマン、映像機材、パソコンなどで技術を持ちながら、それらを統合したiPhoneに相当する製品を生み出せず、その後のリーマンショックで赤字に転落した。職人気質で独自に技術を尖らせることは得意だが、横の連携、統合が不十分だったのだ

近い将来、SonyはAIや自動運転の世界でも生き残りをかけて業態を変化させてゆくだろう。DAPに元気がなくなり嘆いているのは、過去を引きずり柔軟性のない僕らなのだ

久しぶりに倉庫からSonyのポータブル・デジタル・レコーダー・PCM-D50を出してきて音楽を聴いてみた。この緻密な造りと透明感のある再生音は異次元だが、結局音質では劣るiPhoneに押されて姿を消してしまう。確かに技術は間違っていなかった。ただ、時代が求めたのは尖った技術力ではなく統合だったのだ。今のSonyはそれを学び、また別の形で生き延びている

そういうSonyの黒歴史を確認し、答え合わせをしたいなら前出の「ソニー歴史資料館」がオススメ。相変わらず予約が必要で時間に合わせて係員が待ってくれるみたいだから

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