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未来を先取りした『Nikon 1 V1』の悲劇

幻の名機「Nikon 1 V1」(以下V1)、2011年に鳴り物入りで発売されたニコン初のミラーレスカメラだ。同社の求めたのは時代の一歩先を行く「官能的な撮影体験」。使ってみると「心地よいシャッターフィーリング」「世界初の高速位相差AF」「充実した交換レンズ群」などプロ目線で見ても買わずにはいられないカメラだった

そのころカメラはフルサイズのデジタル一眼レフが主流。ニコンも手探りの中、次世代のミラーレス機を出す必要があったのだと思う。その過程でニコン流に解釈して登場したのがV1だったわけだ。注げる技術を巧みに組み合わせ最適解を見つける力にニコンのDNAを感じた

シャッター音が素晴らしく、重厚な精密機械のような感触は昔の銀塩カメラであるF3を感じさせる。とにかく撮るのが楽しくなるのだ。交換レンズにも驚いた。コンパクト機なのにマクロや超広角など11本も販売された。現在売れ筋のAPS-C機の専用レンズがせいぜい数本しか販売されない状況を考えると破格のラインアップだ

そんな秀逸なV1だったけど、販売面では苦戦が続いた。敵は想定のキヤノンやソニーではなく、スマホを作るAppleのiPhone 4Sだったのだ。iPhone 4Sは800万画素で約5万円、対するV1は1000万画素でレンズキットが約10万円。しかもiPhone 4Sはキャリア割引を使うと1-2万円ほどだ。これじゃV1の性能が高くてもiPhone 4Sを買うよね

僕としてはカメラ性能重視でV1を選ぶしかないけど、1インチセンサーのミラーレス機に10万円以上出すのは微妙な問題で発売時の購入は見送り。30万円台で買えたデジタル一眼のD3sと普段撮りはスマホを併用した

しかし2年ほど経ってV1のレンズキットの安売りセールが目に留まるようになる。確か3万円くらいだったと思う。しかも1万円ほどの高級カメラケースまでオマケで付いていた。すぐに2台のボディと3本のレンズを購入した。とてもお買い得だと思ったので、写真愛好家やプロカメラマンに宣伝し、多分30台くらいは周りで買ったと思う

いま考えると在庫一掃セールだろう。2015年以降は新製品の発表もなく2018年にひっそりと生産終了が発表される

スマホに駆逐された結果となったが、V1は最近「未来を先取りしすぎたカメラ」だという評価が僕の中では高まっている。2011年ころは「高画素」「大きなセンサー」というのが高性能機という評価だったが、ニコンは総合的なバランスを考え「1インチセンサー」「1000万画素」をあえて選択した。その判断が市場に受け入れられず競争に負けてしまうわけだが、最近のスマホは「1インチセンサー」「重みのあるシャッター音」などをウリとするものが多く、まさしくV1が奏でていた世界なのだ

複雑な思いを秘めながら、久しぶりにV1を持ち出した。やっぱりフィーリングが良い。ただし10年以上前のカメラなので、色づくりに不満があったり、ボディ内手ぶれ補正がなかったり、暗所に弱かったりする。今、V1をブラッシュアップするとすごく良いものができると思う。ニコンさん、ニコンV1シリーズ復活させてください。技術が空回りした「黒歴史」に触れたくないのもわかる。販売に苦戦しても僕を含め周りで10名は買うからお願い!

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