スマホ民が「縦で映える」世界に生きる一方、僕は「縦でも映える」世界で勝負している———
僕は20年以上写真コンクールの審査を担当したことがある。膨大な応募作品からある程度の枚数に絞る「荒選び」を行い気づくことがある
「横写真が多い」ということ
理由は簡単だ。「カメラは横写真が撮りやすい」から
ところがスマホが普及すると、撮りやすい縦写真が増えた。呼応するようにサムネイル表示も縦写真を軸にデザインされる。インスタも長らくサムネイルは正方形だったが、最近4:5の縦写真を意識したサムネイル表示に変わり「縦写真ブーム」に拍車がかかっている。スマホで撮って、スマホで映える縦写真、、、つまり「モバイルファースト」がトレンドなのだ
ただこの縦写真も映えるのはスマホというカゴの中だけ。商業写真としては成り立たない。例えばWebのニュースに使われる場合、原稿は横書きがほとんどなので横写真のほうが並べやすい。レスポンシブデザインといって、スマホ、タブレット、パソコンの画面表示に対応させる場合は、特に横写真が好まれる。メディアが異なれば「モバイルファースト」が通用しないのだ
新聞や雑誌などの紙媒体でも事情が異なる。見開きで大きく使う場合なども単純に横写真を撮ってはダメ。折り目がセンターに来るので主役を左右にずらす必要がある。ファッション誌の表紙などは縦写真でも、書店の表紙を見せて陳列する面陳棚(めんちんだな)で目立つようにモデルさんの顔を最上部に配す必要がある
特に最近は「紙・Web・大型出力・SNS」など1度の撮影で多くの展開を要求されることが多い。例えば依頼内容は雑誌の対談だけど、直前に「Web対応、講演会ポスター用もよろしく」と言われたりする。意識して納品するけど後からデザインの都合で「右向きで左に空間があるカット」のような追加のオーダーが来たりする。とにかく媒体が増え、ネズミ算的に必要なカットが増えている感じだ
そういう「多ストーリー」に対応するために、「横写真で広めに撮り、縦写真が必要な場合はトリミング」で撮影することが増えた。そのためにカメラは2500万画素では足りないので、トリミング耐性の高い4000万画素機を使っている。縦写真にトリミングしても長辺が5000ピクセル残るので、300dpiでA3サイズまで問題なく印刷できる
僕もスマホに特化した「モバイルファースト」の世界はとても楽しいと思うけど、特に商業写真では通用しない。撮影料をいただく以上「クライアントファースト」で「多ストーリー展開」が必須なのだ。よって自身の撮りたい写真は封印し、クライアントが欲しい写真を撮り続けるしかない。SNSでバズることなんて考えてはいけない、クライアントがバズることだけ考えればよいのだ